つぎの文章を読んで、質問に答えなさい。答えは、1・2・3・4から最もよいものを一つ選びなさい。
ある中学生から私のところに一通の手紙が寄せられた。その内容は、「歴史の教科書に壁画の写真が出ていて、ピラミッドの壁画と紹介されているのだが、それで正しいのだろうか」というものだった。
さっそくその教科書を見て驚いた。載せられている写真は、そのピラミッドとはなんの関係もない、千数百年も後の時代につくられた王墓の壁画であったのだ。
これは、たいへんな間違いである。何がたいへんな間違いなのか。千数百年の時代の隔たりが問題なのではない。もっと根本的に重要な問題がある。それは、ピラミッドの中には絵が描かれていないという事実が、まったく無視されていることである。
そもそも、クフ王の大ピラミッドなどの第四王朝までのピラミッドには、壁画も文字も描かれていない。第五王朝末期のウナス王のピラミッドになって、ようやくピラミッド内部にピラミッド・テキストといわれるヒエログリフが刻まれるようになるのだが、それでも絵が描かれることはなかった。すなわち、あらゆる時代を通じて、ピラミッドの壁に絵が描かれることは、いっさいなかったのである。